アーキタイプで考えるブランディング

2020.12.25

人にはアーキタイプがある

アーキタイプという言葉を聞いたことがありますか?
アーキタイプとは「元型」という意味です。
「元型」とはなんでしょうか?

「元型」とは、心理学用語。もともと心理学の世界では、その礎を築いた二人の巨人がいます。フロイトとユングですが、「元型」はユングによって想起されたアイデアで、読んで字のごとく、「元型」=元のかたちという意味です。

元のかたちとはなんぞや?
それは、私たちの中にある象徴的なパターンです。

私たちは、あまり普段意識していないかもしれませんが、人それぞれに、いろんな状況で、感情的に、また、性格的にいつものパターンに陥っている、もしくは、いつものパターンになっていると感じることはありませんか?

◎自分は悪くない、悪いのはあいつがこうしたからだと誰かを否定して自分を擁護する。
◎仲間と一緒にいると、いつもみんなを楽しませようと一生懸命になる。
◎自分の理想の相手を求めて、ロマンチックな恋愛関係をいつも期待している。
◎人の集まりでは、いつも場を仕切ってしまう。
◎災害などがあると、何か行動しなければいけない気持ちになる。

これらは、誰しも抱く感情や気持ちではありますが、こうした気持ちになりがちだったり、気がつくとこのような感情を抱いているというものがあるのではないかと思います。
なぜ、こうした気持ちや感情になりやすいかというのには、このアーキタイプ=「元型」が影響しているのです。

アーキタイプは、私たちが人間へと進化していく何万年、何十万年という課程の中で、何か感じて表現する。

それは感情であったり、言葉であったり、行動をして、それに対して、相手が人なら、相手からこんな反応を受けた。
状況であれば、こんな状況に陥った。こうしたことが、脳が進化し、感じる情動が、人として高度に進化していく中で、その体験を通じて意識やDNAに刻まれ、集合的な無意識としてパターン化していったものです。
もちろん、これは脳だけの問題ではなく、霊的=スピリチュアルなレベルにおいても意識的な進化、成長をしていく中で、私たちにの心、魂に形作られたものと言えるでしょう。

 

12のアーキタイプ

そのパターンには、12のアーキタイプがあります。

言葉だけ聞くと、少しわかりにくいのですが、それは
幼子、孤児、戦士、援助者、探求者、破壊者、
求愛者、創造者、統治者、魔術師、賢者、道化
です。タロットカードをに親しい人は、カードの図柄でよく見るパターンです。

12 archetype

私たちには、こうした元型が心の中、意識の中にあって、それぞれの人々が、こうしたタイプの個性を無意識に表現し、そんなアーキタイプの人生を生きていると言ってもいいでしょう。

このアーキタイプは、その人の人生の状況によって変化→成長することもありますが、会社のブランドを表現していく時に、会社のターゲットがどんなアーキタイプを持っている傾向があるのか?それによって、会社のブランディングも、そうしたターゲットのアーキタイプに近づけていくことで、より顧客に響くものになるでしょう。
また、会社は、経営者のアーキタイプによって、会社の性格や個性、方向性も影響を受けます。
実は、経営者のアーキタイプは、本当のアーキタイプとは異なる仮面をかぶって、会社を表現していることもあります。そのような場合は、どうしてもそれが仮面であることは見え隠れするので、ブランディングは表面的なものになってしまう可能性があります。

では、12のアーキタイプとブランド表現について簡単に解説します。

1.幼子 Innocent
罪のない、潔白な、無邪気な、純真な、あどけないという意味があります。
こうしたところから、アーキタイプでは、純真、無垢で、楽観的。自身の安全を切望していますが、それは、すべての人が安全で、幸せになることを望んでいることと同義です。
ブランディングでは、安全な子供用のスキンケア商品やアレルギーフリーの安全安心の食品のように、安心を訴求するブランド表現となります。
◎スキンケアメーカー、子供知育会社、保育関連事業、子供育児製品メーカーなど

2.普通の人 Everyman
普通の人は、ユングのアーキタイプでは、孤児という言葉が用いられていますが、現代的な解釈で普通の人という表現が使われることが多いようです。現代社会は普通に生きるだけでも、傷つきやすく、安全を求めています。もっと強くあろう、もっと完璧になろう、愛される人間になろうなど、自分には何か足りないものがあるという思い込みがあるという元型です。
普通の人とブランディングが結び付きにくそうですが、普通の人は拒絶されることを怖れます。社会に溶け込みたい、コミュニティに所属していたい、その中の一員として認められたい思いがあります。正直で、謙虚、友好的なブランドづくり、表現となります。
コミュニティサイト運営や出会い系サービス、地域での生活支援サービス、スーパーマーケットやコミュニティサービスなどはこうしたブランド表現となります。
◎地域コミュニティ支援NPO、介護サービス、カフェ、ITサービス会社など

3.戦士/英雄 Warrior/Hero
戦士は勇気を持って、愛するもののために立ち上がり、強い意志を持って戦います。戦士は、ヒーロー=英雄でもあります。戦士は、敗北も失敗も経験しますが、何度でも立ち上がります。そして、能力を上げていきます。彼らはくじけることが嫌いです。
ブランディング的には、こうしたアーキタイプを表現したい会社は多いかもしれません。強さ、勇気、前に進む力。成長、モチベーション、勝利と栄光という、会社の姿としては輝かしいものです。
◎スポーツメーカー・ショップ、アスリート支援会社、警備会社など

4.援助者 Caregiver
援助者は、困っている人々に寄り添い、支援し、常に、自分に何ができるだろうかと自身に問いかけます。
ブランディングとしては、医療機関はもとより、老人介護施設や障がい者施設、厳しい環境で生きることを余儀なくされている世界中の人々の支援のための活動やチャリティなど。同時に、多くの人々に支援を呼びかけ、支援の輪を拡げていくために、ブランディングも有効に活用できます。
◎NGO、非営利団体、医療機関、教育機関

5.探求者 Explorer
探求者は、より良い人生、より良い生き方を求めています。彼らは常に次なる冒険をイメージし、挑戦していきます。自ら厳しい環境に臨み、克服し、新しい世界を開拓していきます。彼らが求めているのは、聖杯です。それは彼らの本質であり、本当の彼ら自身なのです。
ブランディングとして見るときに、探求者は冒険家のイメージであったり、困難に立ち向かうイメージや新しい世界を開拓していこうというスピリットを感じさせます。探求者は、冒険と勇気の象徴です。
◎アウトドアメーカー・ショップ、イベント会社、ツアー会社など

6.破壊者 Destroyer
破壊者は、これもまた言葉通り受け取ると印象がよくありませんが、これはアウトローとかにすればかっこいいのかもしれません。元型としては破壊者ですが、ポジティブに捉えるなら、現状を打破していく。古くて使い物にならなくなった形骸化したルール、規制やパターンをぶっ壊して、革命を起こす。レボリューションと言ったイメージで見るとカッコイイですね。インドでは、もっとも人気のある神様シヴァ神は、破壊の神様です。破壊がなければ、創造もありません。
ブランディング的には、既存の市場に挑戦したり、批判的に挑発したり、自分らしさ、自分なりの世界を実現していこうとする挑戦するもの。体制への挑戦。ロックの魂や反抗していく、真っ直ぐなエネルギーでもあります。
◎バイクショップ、ジーンズ・ファッションショップ・メーカー、ツアー会社、セミナー会社など

7.求愛者 Lover
求愛者という表現も若干の違和感がありますが、恋する人と言った方がピンとくるかもしれません。恋人は魅力的であることを求めます。同時に、愛する対象を拡大して、人生のあらゆる多様性を楽しみ尊重します。情熱的に燃え上がりたい官能的な感情や夢見がちで、ロマンチックな世界に浸りたい人たちです。
ブランディングとしては、恋人たちのような甘い世界観や魅惑的なムード、ワクワクするときめき。ドキドキする恋。キュートでラブリーな魅力など、そんな世界を表現するものです。
◎コスメメーカー、メイク・ネイル会社、レディースウェア会社・ショップ、カフェ・スィーツショップなど

8.創造者 Creator
創造者=クリエイターは、字義通り、クリエイティブを表現するもので、これまでになかった、誰も考えつかなかったような革新的なアイデアをカタチにしたり、自由な発想で物事に新たな価値や意味を与えたりします。
ブランディングとしては、誰も見たことがない、考えたこともなかった方法や仕組み、製品やビジネスモデル、もしくは、創造性を感じさせる、例えば、子供たちの創造力を育む、または、クリエイティブなセンスを感じさせるイメージを表現するものです。
◎デザイン会社、料理店、企画・イベント会社、映像制作会社、食品製造会社など

9.統治者 Ruler
統治者とは、リーダーであり、王国の導く指導者です。統治者は支配者ではありません。支配者はそこに暮らす人民の意思に関係なく支配するイメージがありますが、統治者は人々からも信頼され、愛される存在であり、人々の希望のシンボルとなる存在です。
王国を豊かに繁栄させていく中で、厳しい決断を迫られる時もありますが、凜として佇みながら、強い勇気と情熱を内に秘め、人々に寄り添う慈愛に満ち、感謝と貢献を使命に、王国の未来に責任を持ちます。
ブランディングのイメージとしては、信頼できるリーダー的な存在であり、先行きの見えにくい世界で、明確な判断を下す姿勢。その存在だけで、安心と希望、期待が拡がるそんなイメージです。
◎コンサルティング会社、会計会社、建設会社、医院など

10.魔術師 Magician
魔術師と言うと、何か怪しげな印象もありますが、魔法使いというとどうでしょうか。アーキタイプでは、魔法使いというより、魔術師という方がリアリティがあります。それは、魔術はいとも簡単に物質化したり、物事を変容させるので、使い方を誤るとダークサイドに落ちてしまう可能性があります。
魔法使いの印象は人によって異なると思いますが、ディズニーに登場する魔法使いやロード・オブ・ザリングのガンダルフのように、善良な魔法使いのイメージは、私たちに夢や希望、人生にウィットを与えてくれます。
ブランディング的には、やはりミステリアスな魔術師というよりも、善良な魔法使いのイメージがワクワクします。しかし、占い師や何かミステリアスなビジネスならば、魔術的な匂いはぴったりでしょう。
一瞬にしてお家をピカピカにするお掃除会社とか、トラブルを解決する、何かを作る、変化させるというビジネスに、魔法使いのイメージを応用できます。
◎お掃除会社、フリーズドライ食品会社、電気・水道工事会社、リフォーム会社など

11.賢者 Sage
賢者は、老健人として表現されるように、基本的には人生経験豊かな、ある程度年老いた老人のイメージが持たれるでしょう。賢者は時に、年齢不像の若き存在や子供として描かれる場合もあり、しかし、それは仮に姿で、幾生もくぐり抜けた深い魂であることが分かります。
老健人は、人生で様々体験をし、良かったこと、素晴らしかったこと、また、苦しみや悲しみも無数に通り抜け、人生というものを熟知し、また、そうした体験から得た豊かな知恵を持っています。それは読みかじりの知識ではなく、深く魂に響く教えです。
ブランディングとしては、賢者はより良きアドバイザーであり、困難に直面したときに、わざわざその存在が暮らす遠くの森の奥まで出かけてでも、そのためのヒントやアドバイスを求めたくなるイメージです。
◎保険会社、コンサルティング会社、住宅会社、不動産会社など

12.道化 Jester
道化は、道化師と言った方がわかりやすいかもしれません。道化師は、ピエロとして表現されることが多いのですが、道化というのは、いたずら好きで、お調子者、いまここを楽しむ天才です。
トリックスターとして描かれることもあります。トリックスターとは、硬直した状態を全く異なる次元で状態をひっくり返したり、シリアスな場面で、おとぼけを行うことで、緊張がほぐれることになったり、道化は馬鹿げたことをするのですが、彼は真剣で、本気です。本当に馬鹿げているのはどちらなのかと問いかけてきます。
道化は、魔術師にた部分があり、人々の当たり前と思っていた価値感を壊したり、その場の状況を一瞬にして変えたりしますが、彼を楽観的で、単なる馬鹿げた存在と思っていると、後で痛い目に遭わされることもあります。道化は、馬鹿げたことをする存在であると同時に、人々の心の奥底に何があるのかを知っている賢者でもあります。道化は、喜びに満ちた人生を生きています。
ブランディング的に道化は、マンネリ化した世界に、新しい風を吹き込んだり、パターンを壊したり、笑いや笑顔を創造する、楽しい会社、大胆な方法で夢を与えるようなビジネスのイメージとなります。
◎ケーキ屋(洋菓子)さん、イベント会社、子供の教育会社、プロダクトメーカーなど

となります。

この12のアーキタイプを見ると、直感的に、自分は戦士だなとか、統治者かな?探求者、道化かなとか、感じる部分はあると思います。

 

どのアーキタイプの影響を受けているのか?

実は、私たちは、この12のアーキタイプをすべて持っています。なぜなら、進化の過程でこのすべてを体験し、私たちの中に内在しているからです。
そして、人生の様々な場面で、こうしたアーキタイプを体験、ある意味で再現していくことになります。
これについては、神話学者のジョセフ・キャンベルによる「英雄の旅=ヒーローズ・ジャーニー」との関連が密接なので、そうした観点でも、またお話したいと思います。
しかし、幼少期からの成長していく過程で、親子関係や家族の状況、家系や地域の文化、気候を含めた生活環境などによって、私たちの心も、その体験を通じて様々な状態に成長していきます。そこで、度々引き起こされる、陥る感情状態や性格的な傾向が形成されますが、そうした傾向が、このパターンの中に表れてくると言うことです。

すべての人がいずれかのアーキタイプを(あくまでその傾向を)表現しているのですが、先にも言いましたが、経営者のアーキタイプ会社の価値感や経営の姿勢に表れます。
それは、会社は、経営者によって経営されていて、会社の理念、ビジョンは経営者によって決められるからです。
つまり、経営者のアーキタイプが、会社の経営そのものに表れ、会社から感じられるその姿、エネルギーが、この12のアーキタイプのいずれかのかたちになっているということになります。

業種業域にもよりますが、もしあなたが経営者で、現在のあなたのアーキタイプがいずれかで、会社のエネルギーもそのアーキタイプであるとしたら、そして、経営環境やお客さんがそのアーキタイプに合っていないとしたら、経営は本来の力を発揮することができず、経営は上手くいかないかもしれません。
例えば、弁護士や生活上のトラブル解決が事業なら、戦士や賢者のアーキタイプがいいかもしれませんが、幼子や破壊者、道化だと適切に問題解決ができるイメージではありません。信頼感を感じられませんね。
また、独自商品の製造メーカーなら、創造者や魔術師はいいかもしれませんが、孤児ややはり破壊者というアーキタイプはイメージに合わないでしょう。

このように経営者のアーキタイプ、会社のアーキタイプはブランディングにおいて、本質的に統合され、表現されることで、もっともエネルギーを発揮することができます。
それと同時に、ターゲットのアーキタイプがどんな傾向なのか、そのアーキタイプがぴったりだったらバッチリですが、そうでない場合はどうそこを摺り合わせていくかが課題となります。

いまのアーキタイプが本当のアーキタイプなのか?
これまでの人生の体験が、あなたに別のアーキタイプというマスクをかぶらせていないか?
それ故に、戦士のアーキタイプや破壊者のアーキタイプ、もしくは、幼子のアーキタイプを演じていないか?

経営のエネルギーを取り戻す。もしくは、よりエネルギーを高め、会社を本来の姿にしていくために、経営者のアーキタイプを理解して、どうバランスを取っていくか、アーキタイプに合った経営の方向に変えていくか、または、会社のアーキタイプをどのように見せていくかを考えていくことで、会社、経営のエネルギーを高めていくことができるでしょう。

他にも、いろいろな角度で経営やマーケティング、ブランディング、Webサイト制作について、お伝えしていますので、他の記事もぜひ、お読みください。ありがとうございました!

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Inspirater 和田達哉
株式会社マイルストーンデザイン 代表

※参考文献/英雄の旅 12のアーキタイプを知り、人生と世界を変える キャロル・S・ピアソン(実務教育出版)